【『ドラクエ11S』を客観的事実から見る!わずかな不便点と、はるかに凌駕する良い点!】

ドラクエ

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 『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』(以下『11S』)は良く”BGMがとても素晴らしい”、”キャラクターやストーリーがとても魅力的だ”と言われることがある。けれどもそれらは個人の主観に基づくものであり、客観的な視点から作品が語られることは少ないのではないか?(ちなみに筆者はBGMもストーリーも非常に素晴らしいと感じている)
 そこでこの記事ではBGMやストーリーという個人の感想になりがちなものではなく、実際のシステムや仕様といった客観的な事実を基に、『11S』のわずかな不便点やそれを圧倒的に凌駕する良い点を紹介したいと思う。ただ一部筆者の感想が混じる部分が出てしまうこと・および今作では『11S』と『11』の2つが存在するが、この記事では『11S』について紹介したものとなる点についてご了承いただきたい。1なお本記事は原則的にこれからプレイする人を対象としているため、1つ1つの内容についてあまり深く記載していない。しかし一部ネタバレに感じる部分もあるかと思うがあらかじめご了承頂きたい。

 早速だが不便点としては以下となる。

  • 時間経過と天候変化システム
  • 長時間を要する住民のセリフ回収や町の探索

 次に特に良い点としては以下となる。

  • 特徴的な”ゾーン”と”れんけい”システム
  • イベント時のフルボイス採用と体験済みシーンの再視聴可
  • 最初から馬に乗れる点と3D・2D各モードへの変更実装
  • 優れたキャラ調整と奥深いバトルシステム
  • スキルパネル解放やヨッチ族のイベントなどの豊富なやり込み要素

 結論として、『11S』の不便な点はゲームを進める上で大きな支障とはならないし、良い点は『11S』を非常に魅力的な作品へと仕上げるものになっている。この記事を読むことでプレイ済の方には「確かに!」と共感していただけると思うし、「これから始めたい!でもやろうか迷うな…」という方に対しては「面白そうだな。やってみよう!」と背中を押せる一助になれるのではと考えている。
 ※なお今回記事を執筆するのにあたり下記サイトを参考・引用させていただく。

『ドラゴンクエスト大辞典を作ろうぜ!!第三版 Wiki*』
https://wikiwiki.jp/dqdic3rd/

【不便点①】時間経過と天候変化システムの仕様

 過去作でも採用されている「時間経過(今作では朝・昼・夕方・夜)」システムと、外伝作品から逆輸入されたという「天候変化(晴れや雨)」システムが採用されている。2これらは3Dの世界観と合わさってリアリティ感を演出するのと同時に、イベントシーンでも高い演出効果をもたらすものとなっている。ところがその一方で「時間」「天候」共に不便に感じる面はある。

⚫️時間経過が住民の行動を見たり、セリフを聞いたりすることに対して不便
 …(筆者は『ドラクエⅧ』を未プレイであるため、『Ⅷ』においても同様であることを知らなかったが)『11S』では時間がフィールドだけでなく、町の中でも経過する仕様になっている。朝・昼・夕方・夜と細かく作り込まれているためそれぞれの雰囲気が異なり楽しめるのだが、住民の行動やセリフは日中と夜では異なることも多く、全部の反応を楽しみたいプレイヤーにとっては不便に感じやすい。それは時間が勝手に経過して夜→朝になってしまい、住民の行動やセリフが変更されるためだ。時間は宿屋で「休む」コマンドを使用することで簡単に変えられるものの、宿屋まで行って休んでまた元の場所に戻る必要がある点は不便といえる。ラナルータのように、せめて昼と夜を任意で切り替えできる呪文があれば……

⚫️天候システムの切り替えが不便
…天候の違いは特に戦闘やイベント面に影響を与えるわけではないが、雨でしか出現しない敵や一部のクエストでは雨でしかクリアできないものがある。それにせっかくのシステムなので、例えば「夜の雨の雰囲気を楽しみたい!」と思うときもあるかもしれない。そのような実用性でもプレイヤーの気分という意味でも自由に天候を変えられると良いが、今作では呪文や道具などで自由に変えられず、また時間経過と違い宿屋で切り替えるなどの手段もない。一応切り替えする手段が無いわけではないが非常に面倒であり、基本的には自動的に切り替わるのを待つしかない。幸いそこまで天候で困ることは少ないが、不便な点といえる。

【不便点②】長時間を要する住民のセリフ回収や町の探索

 フィールドのみならず、町についても高低感や奥行感など細部にわたるまで作り込みがされているため、基本的にはプレイして楽しいと感じられる人が多いだろう。ただ、住民のセリフを聞きに行くことや町を探索することに時間を費やすくなる。筆者の体感にはなるが例えばデルカダールという大きな城下町の場合、隅から隅まで町の中を動き回ると軽く20分は超えると思う。しかもこれに加えて日中と夜それぞれでセリフを聞く場合、1時間近くかかる印象があった。新しい町や以前来た町でもストーリーが進むにつれ住民のセリフは変化する。そのたびに同様の手間がかかることになり、住民のセリフを聞くという基本部分に不備が感じられた。これに関してはダンジョンの探索の方がシンボルエンカウント方式が採用されていることもあり、短い時間で終わらせられるかもしれない。

【良い点①】特徴的な”ゾーン”と”れんけい”システム

 戦闘の最大の目玉として、”ゾーン”と”れんけい”技というシステムが採用されており、これらが戦闘に大きな影響と彩りをもたらしている。

⚫️”ゾーン”システム
…戦闘中一定条件(そのキャラの累積行動数や被ダメージなど)を満たすと発生するもので、この状態になると各キャラごとに異なるステータスが上昇し戦闘を有利に進められるようになる。さらに、次に述べる”れんけい”技を使用できるため強力なシステムである。

⚫️”れんけい”技システム
…”ゾーン”状態になることで、一定のキャラの組み合わせで”れんけい”技を使用できるようになる。”れんけい”技は敵に対して強力な攻撃を与えるものから、味方全員を回復したり、力や守りなど状態をアップさせたり、確定でレアアイテムをドロップさせたりするものなど多種多様な効果を持つ。それに演出も非常に凝っているため見るのも楽しい。下記の動画ではその一部が紹介されているが、このような技が全部で84種類ある。全部のムービーを見てお気に入りの技を探すのも一興だろう。

※れんけい技については2:38~2:52の間を参照

 ※なお、”ゾーン”は一定行動回数の経過や、”れんけい”技を使用すると解除される。けれども『11S』は戦闘メンバーの入れ替えが可能であるが、これは”ゾーン”状態になったキャラを入れ替えた場合でも”ゾーン”状態を維持したままにできる。そのため戦闘メンバーを入れ替えする必要性が他作品と比べて高くなりやすい。満遍なくキャラを使いたい人にとって有意義なシステムになっている。

【良い点②】イベント時のフルボイス採用と体験済みシーンの再視聴可

 『11S』は『11』のリメイク作品となるが3、その際にイベント時のムービーシーンがフルボイスで採用されるようになった(通常戦闘時にも掛け声や”れんけい”技使用時に採用されている)。

※お時間のない方は最初~1:58までは視聴をお薦め

 この動画内で「旅の者よ。ようこそ我がデルカダール城へ」と主人公を歓迎しているホメロスというキャラは、心に闇を抱えていることが明らかになる。その難しい役柄を声優の櫻井孝宏さんが見事に演じられている。また「災いを呼ぶ悪魔の子め!」と主人公に剣を突き付けるグレイグという威風堂々とした武人は声優の小山力也さんが演じられ、『ドラゴンボール』でフリーザを演じた声優の中尾隆聖さんがフリーザをほうふつとさせる悪役として登場されるなど、声優に詳しい方であればより楽しめるものになっている。
 次に今作ではストーリーの中盤くらいから行けるようになる、ある特定の場所に行くことでそれまでに体験したイベントシーンを全て再視聴が可能。過去のシーンを振り返ることでプレイした時のことを思い出せるのも1つの楽しみ方であろう。さらに会話の再現だけでなく選択肢も出てくるので、あえて本編の時とは違う選択肢を選んで相手の反応を楽しむこともできる。

【良い点③】最初から馬に乗れる点と3D・2D各モードへの変更実装

⚫️最初から馬に乗れることのメリット

 …ドラクエは通常ストーリー開始時点において徒歩での移動になるが、『11S』ではほぼストーリー開始時点から馬に乗ってフィールドを駆けまわることができる。馬に乗ることでの颯爽感と、シンボルエンカウントにより敵との戦闘を避けられることでのテンポの良さを生み出している。さらにフィールド曲の『勇者は征く』の冒頭メロディーは、中山競馬場のGIレースのファンファーレ後半部分とほぼ同じ音の運びであるらしく、馬で駆けまわるイメージを持たせやすくなっている。4

⚫️3Dと2Dモード変更の実装

 …ストーリーを最初から始めるとき、さらには神父や女神像でセーブをするときに、3Dと2D各モードへの切り替えが可能である。3Dモードは画面がぐるぐると回るため酔いやすく苦手に感じる人もいると思う。けれども2Dモードに切り替えることで気軽に遊びやすくなる。そのため”遊びたいけど、3Dだと酔うから遊べないや…”という人にもうってつけだ。それに2Dモードは昔からドラクエで採用されているため、ノスタルジーを感じられる人も多いのではないだろうか。地味ながらユーザーのことを考えた良システムといえる。5

【良い点④】優れたキャラ調整と奥深いバトルシステム

 もちろんバトルそのものについても非常に奥深く、上記で記載した”ゾーン状態”や”れんけい”システムの存在により、幅広い戦術を組み立てることが可能である。これに加えて各キャラ自体の特徴や性能が、絶妙なバランスで調整されていることも奥深さを強めている。主人公を含めて仲間キャラは8人いるが、それぞれ下記のような特徴がある。

 ●ベロニカ


…力やHPは低く、攻撃呪文に特化したドラクエ定番の魔法使いという位置付け。使える呪文はマダンテを筆頭に、メラ系やギラ系・イオ系の最高位呪文やルカニ・マホトーンなどの補助呪文も習得するため非常に強力。特技についても「魔力かくせい」など自らの攻撃呪文を高めることで強力な攻撃呪文の威力をさらに高めたり、(特技ではないが)習得できるスキルの「やまびこの心得」では一定確立で呪文が連発できたり、豊富なMPと合わせて最大限攻撃呪文を活用できるキャラである。”れんけい”技についてはセーニャとの組み合わせで使える<クロスマダンテ>が強力無比。他にも<大まどうしこうりん>という一定の間高確率で呪文が連発できる(ただし、マダンテは対象外)ものなど、こちらも彼女自身の攻撃呪文を存分に発揮できるものとなっている。そしてストーリー上のイベントでも『11S』にとどまらず、全ドラクエの中で1番といえるほどの見せ場を持つキャラ。

 ●セーニャ


…回復呪文に特化した、ザ・僧侶という位置付け。ザオリクはもちろんのこと、ベホマズンまで習得できる。反面攻撃呪文は唯一バギ系を最高位まで習得できるもののそこまで強くはない。物理攻撃も槍を装備できるためそこそこダメージは出せるのは大きい。しかし同じ槍使いのマルティナに比べるとどうしても攻撃力は見劣りするため、通常戦闘では控えメンバーになりやすい。けれども特技の中には「キラキラポーン」という状態異常を防ぐ効果を味方1人に付与できるものや、彼女が得意とする竪琴を奏でて各属性ダメージを減少する「旋律」などの防御系に優れている。”れんけい”技についても<ゴスペルソング>や<妖精のポルカ>という、味方を回復しながら状態異常を解除したり、逆に補助効果を付与したりする技を使えるほか、ベロニカとの”れんけい技”<クロスマダンテ>が絶大。どちらかといえばボス戦において不可欠な存在となりやすいキャラ。

 ●ロウ

…別の記事でも紹介したスーパーおじいちゃん。物理攻撃・攻撃、回復、補助それぞれの呪文を万能に扱うことができるものの、各分野の専門となるキャラに比べると器用貧乏感は拭えない。けれども氷系と闇系の最上位呪文を覚えることができるため、状況によってはベロニカ以上に役立てる。また回復・補助呪文に関してもザオリクやフバーハなど高いレベルで習得できるため、パーティーを立て直せる力を持つ。特技についても「零の洗礼」という敵1体の特殊効果を解除するものや、必ず習得する全体攻撃技の「グランドクロス」も使いやすい。”れんけい”技はメタル系モンスターも必ず眠らせる<ユグノアの子守歌>や、一定の間MP消費量をゼロにする<ミラクルゾーン>や<超ミラクルゾーン>という使い所によっては最大限の効果を発揮する技を習得する。6できそうだけど、できないことをできるのが強みのキャラ。*ロウについてはこちらの記事でも紹介

【ロウ】単なるネタキャラに留まらない、強さと賢さと優しさを兼ね備えた超絶老人!


 ●シルビア

…物理攻撃はさほど強くなく、呪文もバイキルトは取得できるがそれ以外はそこまで強力とも言いづらい。一見すると使いにくいのだが習得できる特技が魅力的。例えば「ハッスルダンス」を最短で加入直後から使用できる。ドラクエは全体回復手段がわりかし中盤以降になりやすいが、その中で序盤から使用できるのは大きな強みとなる。さらに終盤になると習得できる<レディファースト>という特技は、女性キャラに自分の行動権利を渡すことでそのキャラが1ターンに2回動けるようになるという強力なのもの。今作の女性キャラは物理攻撃・攻撃呪文・回復呪文にそれぞれ特化しているため、様々な状況に臨機応変に対応できる。”れんけい”技については<師匠よび>や<ナカマよび>という自分に関係する人物を呼び出して攻撃するものや、<ゆうしゃのまい>や<アクロバットスター>のような華麗に踊って補助効果をもたらすものなど、全体的に派手。だが何より戦闘中の敵をメタル系に変えてしまう壊れ技<スペクタルショー>が強力。7万能型で通常戦闘でもボス戦でも使いやすいキャラ。

 ●カミュ

…最初に仲間になる相棒的キャラ。すばやさの数値が非常に高いが、中盤は火力不足のため控えメンバーに陥りやすい。攻撃呪文については土系統の呪文を最高位まで覚えられるが、魔力が高くないので使いづらい。ところが終盤に近付くにつれ強力な特技を習得することで、最強の物理アタッカーとなれる。様々な条件はあるのだが、「分身」と「デュアルブレイカー」という特技でボス相手にも数千以上のダメージを容易に出せるほどだ。それと彼は盗賊であるため敵からアイテムを盗むことができるのだが、レアアイテムは通常盗むことができない。けれども”れんけい”技の中にはレアドロップを確実に取得し、さらには経験値も増加できる<スーパールーレット>がある。また<ビーストモード>という一定の間カミュの能力をアップさせる上に、2回行動を可能とする技もあるので彼の物理能力をさらに発揮することができる。お膳立ては必要とするものの、うまくハマったときの火力はFFにも匹敵するロマンのあるキャラ。

 ●マルティナ

…呪文は一切習得できず、MPも低いため特技も多用しづらい。けれども仲間になった直後から、主力アタッカーとして大活躍できるステータスの高さを持つ。特技もカミュのように異次元のダメージは出せないものの、お膳立てを必要とせず気軽に高ダメージを出しやすい。例えば「ばくれつきゃく」は1グループの敵に対して通常攻撃の0.5倍×7の攻撃をするが、槍を装備した状態であればその槍での攻撃力で計算される。彼女の槍での攻撃力はセーニャと比べものにならないほど強力なため、「ばくれつきゃく」での攻撃力も強烈。それに加えてシルビアのところで触れた<レディファースト>の対象なので実質2回行動が可能なことも彼女の強さを引き立てる。それから”れんけい”技についてはシルビアとカミュの所で触れた<スペクタルショー>や<スーパールーレット>を発動するのに際し、両方とも彼女がいないとできない。そしてこれだけでも有益なのに、お色気担当として敵だけでなくプレイヤーも魅了してくれる素敵なキャラ。

 ●グレイグ

単独での画像がないため、全体画像より。右端の男性がグレイグ

…ストーリーの中盤以降最後に仲間になる。攻撃呪文は一切習得できず回復呪文はベホイミ止まり。特技についても全体攻撃を行えるものが唯一彼だけない。けれどもHPや守備力が非常に高く、敵単体や1グループに対して強力な特技を持つ。特に彼だけが装備できる斧での攻撃は顕著であり、例えば「蒼天魔斬」は単体の敵に対して3倍のダメージを与える上に、一定確立で相手を麻痺させる。全体的に斧は使いやすい特技が揃い、さらに片手武器という扱いで盾を装備できるため、彼の長所である高い守備力を減少させないことも大きい。そして「におうだち」を習得できるため、パーティーの盾として抜群の存在感を発揮してくれる。”れんけい”技は攻撃系のものが多いが、中でも<忠義の鉄魂>は彼自身の守備力に応じたダメージを与えるという珍しいものであり、なおかつ全84種類ある”れんけい”技の中でも屈指のネタ度を誇る。意外とお茶目な部分も多いが、先頭に立って戦う姿はまさに”勇者の盾”といえるキャラ。

そして最後に勇者である主人公の特徴は以下のようなものとなる。
 ●主人公

…攻撃呪文はデイン系やベギラゴンを習得できるものの、ベロニカやロウと比べて魔力が低く、MPに関しても上記2人やセーニャに比べると物足りない。しかし全体的にバランス良くステータスが高い上に、習得できる特技が秀逸。例えば「渾身斬り」は序盤から習得できるものの、その威力は敵1単体に1.75~2.25倍のダメージを与えられるため非常に強力。中盤以降はイベントで確実に習得できる「覇王斬」は消費MPこそ高いものの、敵全体へのダメージ技であり通常戦闘で役に立つ。さらに使用することで”ゾーン状態”になれる「ゾーン必中」は、使用しないことが一種の縛りプレイとさえいえるほどの特技となる。そして何より”れんけい”技については彼が構成員となるものが全部で67種類もあり、上記で紹介した”れんけい”技のほとんどは彼がいないと発動できない。さらにはベホマズン・ザオリクといった回復系最上位呪文も習得できる、まさに勇者と呼ぶにふさわしいキャラ。

 このようにキャラごとの特性がバランス良く設定され、色々な戦闘スタイルを楽しめる。特に作中のミニゲームの1つに”連武討魔行”という、仲間を1人〜3人ずつ選出して敵と闘うものがある。条件以内に勝てば強力な装備やアイテムを貰えるため有益だが、うまくメンバーの組み合わせや闘い方を工夫しないと勝てない。さらに本作ではゲーム中で”縛りプレイ”という設定をしてプレイを開始することができる。これは全部の敵が強化されたり、味方が防具を装備できなかったりと、公式から制約を科されたもの。一度通常プレイでクリアした後、今度は”縛りプレイ”で遊んでみるのも良いだろう。8

【良い点⑤】スキルパネル解放やヨッチ族のイベントなど、豊富なやり込み要素

 ドラクエは後の作品になるほどストーリー以外の”やり込み要素”が多くなってくるが、今作でも数多くの”やり込み要素”が用意されている。いくつか例に出そう。

⚫️各キャラごと専用の「スキルパネル」が用意されており、今作では原則レベルアップごとにスキルポイントが付与される。このスキルポイントを各キャラごとに設定されたスキルへ自由に振ることで、特技の習得やステータス上昇が可能となる。好きなキャラの特性を伸ばしてバトルを有利に進められるのはもちろん、あえて違う楽しみ方もできる。例えばセーニャは「ヤリ」「スティック」「たてごと」という「スキルパネル」が用意されており、9通常プレイだと「ヤリ」はあまり使われないことが多い。けれどもあえて「ヤリ」スキルを伸ばして物理アタッカーとして使う楽しみ方ができる。それからマルティナは物理攻撃に特化したキャラであり、「ヤリ」や「かくとう」「ツメ」という攻撃用スキルを伸ばしたくなるが、「おいろけ」スキルを伸ばして楽しむプレイもある(筆者は真っ先に「おいろけ」スキルを習得していった……)。こうした自由度の高さが魅力であり、全キャラ全ての「スキルパネル」を取得させることは一種のやり込み要素ともいえる。10

⚫️ストーリーを進める中で「ヨッチ族」という謎の生物たちと出会う。詳細は省くが彼らを見つけ出すことで”合言葉”を聞ける。その”合言葉”でドラクエ1〜10までの特定された3つの場所(『ドラクエⅩ』のみ2つ)へ行けるようになるのだが、そこでは本来の歴史が改変されてしまっており、その世界のキャラから歴史を修正するクエストを受けられるというもの。11中には過去作に登場したキャラからクエストを受注したり、そのクエストクリアに関わったりすることもあるため、過去作をプレイした人が思わずニヤリとするであろう。もちろんクリアごとにアイテムを貰えるので有益でもある。こちらは「スキルパネル」全取得に比べたら難易度はそこまでではないものの、かなり楽しめる”やり込み要素”となっている。

⚫️今作でもドラクエ定番の裏ボスが登場するが、この裏ボスがとてつもなく強い。レベル99にして最強装備を整えたとしても、何も考えずに勝つことはまず不可能である。この裏ボスに勝利することも相当なやり込み要素といえる。

⚫️そしてシンプルながら、かなり大変ともいえるやり込みはレベルを最大にすることではないだろうか。筆者は今まで一度もドラクエでレベルを最大まで上げたことはなかった。けれども『11S』は非常にレベルを上げやすい作品であり、通常プレイでも70ぐらいまではあまり意識しなくても上がりやすい。さらに”れんけい技”の<スペクタルショー>を使用することで、全員のレベルを最大まであげることが比較的容易。筆者の感想にはなるが全員のレベルを99までした時には長年の目標が1つ叶い、かなりの充足感を得られた。もし筆者と同じように最大レベルにすることに憧れがある方は、同じような体験を味わってほしい。

【おわりに】

 以上までで『11S』の不便な点と良い点を客観的に紹介した。簡単にまとめると

  • 不便な点:
    △3Dならではの立体感や奥行き感が優れている反面、隅々まで見て回るのに時間がかかる。
    △時間の経過や天気の変化を調整するのに手間がかかる。
  • 良い点
    △”ゾーン”や”れんけい”・「スキルパネル」などにより、豊富な戦闘スタイルやキャラ育成・活用を実現している。
    △シンボルエンカウント方式とストーリー冒頭から馬に乗れるため、テンポが非常に良い。同時に2Dモードの実装により昔ながらのドラクエを味わえる。
    △「ヨッチ族のイベント」や”連武討魔行”などの豊富なやり込み要素の実装。レベル上げがしやすいため、レベルカンストを狙いやすい。
    △有名な声優が多数起用されイベントシーンにより臨場感が増した。さらに一度視聴したシーンは特定の場所に行くことで何度も視聴できるので、お気に入りシーンをリピートできる。

 こう見ると不便点はゲームの本質に大きく影響するものではないし、それを補って余りある良い点が『11S』には詰まっている。これは筆者の個人的な感想にはなるが、特に”ゾーン”システムの採用はメンバーの入れ替えを積極的におこなう動機付けとなり、仲間キャラを満遍なく使用できるという点が良かった。他にも様々な楽しめる要素が詰まっているので、プレイヤー1人1人がこの作品の良さを感じてほしい。
 最後にこの記事を見て1人でも多くの方が「『ドラクエ11S』買おうか迷っていたけど、買おう!」と思えてもらえたら、とてもうれしく思う。

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  1. 『11S』はいわば”パワーアップキッド”のような位置付けであり、『11』には無かった追加要素が加えられている(例えば『11』では声優が起用されていない。それから裏ボスが『11』では登場しないなど)。 ↩︎
  2. 時間と異なり天候の変化はフィールドのみで適用され、町の中では変わらない。 ↩︎
  3. Wikipediaの「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて(注釈2)」より
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88XI_%E9%81%8E%E3%81%8E%E5%8E%BB%E3%82%8A%E3%81%97%E6%99%82%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A6#cite_note-8 ↩︎
  4. 馬は単なる乗り物という要素に加えて、本編ストーリーにも関わってくる。おまけにミニゲームの中に「ウマレース」という文字通り乗馬レースもあり、かなり本作が馬に対して力を入れていることがうかがえる。 ↩︎
  5. ただし、元々3Dモードと2Dモードではシステムが異なるため、切り替えによってはアイテムの取得がリセットされるなどの仕様もあるので注意。 ↩︎
  6. ただし、「マダンテ」や「メガザル」といったMP全消費の大技には適用されないので注意。 ↩︎
  7. けれども100%成功するわけではない。失敗した場合はシリーズおなじみの殺戮マシーンに変更される…… ↩︎
  8. ただしゲーム開始時点でしか選ぶことはできない。また途中でやめることはできるが、その場合は再度設定することはできないので注意 ↩︎
  9. あるイベントを経過後、「ムチ」と「まどうしょ」・「つえ」スキルが新たに追加される。最もさらにストーリーが進むとまた使用できなくなるが…… ↩︎
  10. スキルパネルを全て取得するために必要なスキルポイントは、レベルを上がるだけでは絶対に足りないようになっている。あるモンスターのドロップを狙う必要があるが、これがかなり大変。こうした点もやり込み要素に拍車をかけている。 ↩︎
  11. 例えばドラクエⅡのムーンブルクの町では町の人が全員犬となり、主人公の仲間である王女だけが人間の姿でいる。本来は逆なのに…… ↩︎

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